不妊症を知る
妊娠を望んでいる場合に、
月日が経つにつれ自分たちはこのまま自然に授かれるのか、
不妊症ではないかと不安になることがあると思います。
では、不妊症とはどのような状態のことを言うのでしょうか。
不妊症となる原因や検査、その治療法を知っていきましょう。
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基礎知識
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不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(1年以上が一般的)妊娠せず、何らかの治療をしないと、それ以降自然に妊娠する可能性が低くなる状態を言います。
不妊症の原因(女性)
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排卵因子
月経不順の場合、月経のような出血があっても排卵を伴わないことがあります。排卵が起こらない原因には、ホルモン異常を原因とした多嚢胞性卵巣症候群や高プロラクチン血症があります。その他、精神的ストレスや急激な体重変化も排卵障害の要因となります。
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卵管因子
性器クラミジア感染症に感染すると、卵管の閉塞や卵管周囲の癒着により卵管に卵子が取り込まれにくくなります。特に女性は無症状のことが多く、感染に気づかないことがあります。また、子宮内膜症の方は、卵管周囲の癒着が起こることがあります。
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子宮因子
月経量が多く、血液検査で貧血を指摘されたことのある方は、子宮筋腫や粘膜下筋腫の疑いがあります。粘膜下筋腫は、受精卵の子宮内膜への着床障害を起こし、一部の子宮筋腫は、着床を妨げるだけでなく精子が卵子へ到達するのを妨げることがあります。
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頚管粘液因子
排卵期には透明で粘調な帯下(おりもの)が増加しますが、子宮頸部の手術や炎症などにより頸管粘液量が少なくなると、精子が子宮内へ貫通しにくくなります。
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免疫因子
何らかの免疫異常で抗精子抗体(精子を障害する抗体)を持つ方は、抗体が頸管粘液内にも分泌され、精子の運動性が失われ、精子の通過を妨げてしまいます。
不妊の原因(男性)
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精管因子
原因としては精索静脈瘤が多く、精子の通過する精管の圧迫により精子の数や運動性が低下しますが、外科的手術によって精液所見が回復する可能性があります。
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性機能因子
勃起障害、膣内射精障害などにより、性交渉がうまくできない場合があります。一般的には、ストレスや妊娠に向けての精神的なプレッシャーなどが原因と考えられます。また、糖尿病や生活習慣病が原因となっている場合もあります。
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精子因子
精液中に精子がまったく見受けられない無精子症、精子の数が少ない乏精子症、精子の運動率が低下している精子無力症など、造精機能に原因があります。脳下垂体からのホルモン分泌低下が原因の場合もありますが、多くは原因不明です。おたふく風邪の原因になるムンプスウイルスによる精巣炎が原因である場合もあります。
不妊症の人の割合
不妊を心配した夫婦は3組に1組以上、不妊の検査または治療経験がある夫婦は 4.4組に1組、結婚5年未満の夫婦の 6.7%が不妊の検査・治療中、という調査結果があります。
※「2021年社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」より引用
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検査について
どのような検査を受けることで不妊症かどうかを知ることができるのでしょうか。ここでは、検査についてみていきましょう。
女性の検査
基本的な検査
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内診、経腟超音波検査
子宮・卵巣を診察し、子宮内膜は超音波プローブを腟から挿入して、子宮筋腫・卵巣のう腫・子宮内膜症などの異常がないかを確認します。
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子宮卵管造影検査
X線による透視をしながら子宮口から子宮内へ造影剤を注入し、子宮の形や卵管が閉塞していないかを確認します。
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血液検査
ホルモン検査や、糖尿病など全身疾患に関係する検査を行います。ホルモンは月経周期によっても変化しますので、月経期・黄体期などに分けて検査します。
特殊な検査
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MRI検査
磁場を用いて体の断面像を撮り、子宮や卵巣形態を詳細を確認します。超音波検査で異常が見られた場合の精密検査として行い、子宮筋腫や子宮内膜症病変の診断に有用で、卵管水腫など他の不妊の原因となる疾患を見つけることができます。
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腹腔鏡検査
全身麻酔下で臍部(おへそ)からカメラをいれてお腹の中を観察し、子宮内膜症や卵管周囲の癒着といった不妊の原因を発見できる場合があります。また、卵巣嚢腫や子宮筋腫などがある場合には切除することが可能で、多嚢胞性卵巣症候群の治療(卵巣開孔術)を行うこともできます。
男性の検査
基本的な検査
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精液検査
精液検査を行い、精液量・精子数・運動率・直進率・正常形態率などを調べます。この検査結果で異常が見られた場合は、別の検査で原因特定を行います。
さらに詳しい検査
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超音波(エコー)検査
精索静脈瘤の診断に最も有用で、精巣がんが発見されることもあります。
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内分泌検査(採血)
精子を作るために必要な、血液中の男性ホルモンや性腺刺激ホルモン、プロラクチンなどから、精液異常の原因を調べます。
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染色体、遺伝子検査(採血)
染色体の軽微な変化や遺伝子異常が、精子形成障害の原因になることがあるため、精子数が極端に少ないまたは無精子症の場合は、染色体や遺伝子の検査を行うことがあります。
治療可能な不妊原因が見つけ出されたり、ときどき精巣腫瘍が発見されることもあります。
03
治療について
不妊治療を行う場合、まず一般不妊治療と呼ばれるタイミング法や人工授精を行い、次に生殖補助医療と呼ばれる体外受精や顕微授精と、ステップアップしていきます。 不妊の原因や年齢、費用のことなど、医師と相談しながらライフスタイルに合わせた治療を進めていきましょう。
一般不妊治療
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タイミング法
経腟超音波検査などで排卵日を予測し、性交渉のタイミングを合わせる治療です。排卵日の2日前から排卵日までに性交渉があると妊娠しやすいと言われています。
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人工授精
主に男性不妊症の治療として行われ、採取した精液から運動している成熟精子を洗浄・回収し、それを排卵の時期にあわせて細いチューブを用いて子宮内に注入することで妊娠を試みる方法です。
生殖補助医療
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体外受精
採卵手術により排卵直前に体内から取り出した卵子を、体外で精子と受精させる治療です。順調に発育した良好胚を選んで子宮内に戻します。
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顕微授精
顕微授精は、卵子の中に直接ひとつの精子を注入して受精させる方法で、卵子と精子が自然に受精できない受精障害の場合に行われます。