不育症を知る
妊娠した場合に、月日が経つにつれ自分たちはこのまま無事に出産できるのか、
不育症ではないかと不安になることがあると思います。
では、不育症とはどのような状態のことを言うのでしょうか。
不育症となる原因や検査、その治療法を知っていきましょう。
01
基礎知識
-
不育症とは、妊娠は成立するが流産(妊娠22週未満)や死産(妊娠22週以降)を繰り返してしまう状態を言います。超音波検査で妊娠が確認された後、一般的には流産や死産を2回繰り返すことを言います。
不育症は、原因が特定できないことが多くありますが、一定頻度で異常が認められるリスク因子があります。
リスク因子
-
抗リン脂質抗体症候群
抗リン脂質抗体が血液中に産生されることで血栓がつくられやすくなる血栓症で、流産・死産などの妊娠合併症を引き起こす自己免疫疾患と言われています。
-
子宮形態異常
子宮の形が正常な状態とは異なり、胎児や胎盤が圧迫されることで流産や早産につながることがあります。
-
夫婦染色体構造異常
赤ちゃんの両親どちらかに染色体異常がある場合、卵子や精子がつくられる過程で一定の割合で正常な染色体・異常な染色体となります。異常な染色体の卵子または精子が受精すると流産となります。
-
内分泌異常
甲状腺機能低下症、糖尿病などでは流産のリスクが高くなります。また、早産等の産科合併症のリスクも高いため、妊娠前から妊娠中にかけて良好な状態を維持することが重要です。
不育症の人の割合
2回以上の流産を経験する頻度は約5%、3回以上の流産を経験する習慣流産の頻度は約1%と言われています。実際の頻度や人数を推定することは難しいのですが、日本では2回以上の流産既往歴のある不育症が約3.1万人存在し、うち6,600人が3回以上の流産歴を持つ不育症とされています。
02
検査について
どのような検査を受けることで不育症かどうかを知ることができるのでしょうか。ここでは、検査についてみていきましょう。
-
子宮形態検査
超音波検査、子宮卵管造影検査、MRI検査、子宮鏡検査を行い、子宮の形を確認していきます。
-
内分泌検査
血液検査により、甲状腺ホルモンや糖尿病の検査を行います。
-
夫婦染色体検査
血液検査により、染色体異常の有無を調べますが、専門家による遺伝カウンセリングを受けながら進めることが望ましいです。
-
抗リン脂質抗体検査
血液検査により抗体を調べます。
03
治療について
不育症治療を行う場合、不育症検査によって得られたリスク因子に対して治療を行います。
必ずしも、投薬や手術による治療を行わないと出産ができないものではないため、治療が必要かどうかは医師と相談しながら進めていきましょう。
-
子宮形態異常
双角子宮に対する形成手術、中隔子宮に対する子宮鏡下中隔切除が行われていますが、手術をしなくても出産できる方は多くいます。
-
内分泌異常
甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症には、甲状腺剤による治療を行います。
-
夫婦染色体異常
専門家による遺伝カウンセリングを受けながら、着床前遺伝学的検査を行う場合があります。
-
抗リン脂質抗体異常
流死産予防としては、低用量アスピリン・未分画ヘパリンを妊娠初期から投与するのが標準的治療法です。